この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
「別に……」
「ヤケに機嫌悪いな。生理か?」
「ち、違う!」
「じゃあ、1週間は禁欲だな」
「だから、違うって言ってるでしょ! それに、銀は禁欲なんかしなくていいよ。シたかったらすればいい」
「……でもなぁ~生理の時は、ちょっと……」
「もう! トボけなくていいよ。抱く女はいくらでも居るんでしょ?
私なんかより、ずっと好きな人が……」
そこまで言って、私は部長室を飛び出した。泣きそうだったから……
とても仕事する気になれず、そのままオフィスを出たのはいいが、どこへ行こう。
暫く廊下をウロついて辿り着いたのは、医務室。
「あのぉ~おばあちゃん?」
遠慮気味にドアを開けると私の名を呼ぶ明るい声が聞こえてきた。
「まぁ~神埼さんじゃない。ほらほら、入りなさい」
「うん」
診察用の丸椅子に座らされ、おばあちゃんの入れてくれたお茶を頂く。
温かいお茶で少し気持ちが落ち着いてきた。すると、おばあちゃんが心配そうに聞いてくる。
「どうしたの? 顔色悪いけど、生理?」
「ブブッ……」
おばあちゃんまで、なんで生理なのよ~
「うぅん。そうじゃなくて……私、失恋したみたい」
精一杯、明るく言ったつもりだったけど、おばあちゃんは私の胸の内を察した様で、湯のみを持つ手をギュッと握ってきた。
「神埼さん、失恋なんて大したことないわよ。私なんて、もう恋も出来ないんだから……年上の人が好みだけど、この年になると年上の人には滅多にお目にかかれないからね~」
だろうね……
「で、お相手は会社の人?」
その瞳は心配してるって言うより、興味津々って感じにしか見えない。
「うん、まぁ……」
私が答えを濁してると突然後ろのカーテンが開き、聞き覚えのある声がした。
「相手は、リゾート開発営業部の沢村部長だよ」