この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
定時になるまで橋倉さんのマシンガンの様な質問攻撃は続いた。
「もぉ~勘弁して下さいよ」
「いいやっちゃ! 勘弁ならない!」
橋倉さん、どこの出身だ? てか、これ以上彼女に付き合ってたら気分が落ち込むばかりだ。とっとと帰ろう。
「じゃあ、失礼します」
小走りでオフィスを出ると間の悪いことにアポから帰って来た銀とバッタリ出くわしてしまった。
「……お疲れ様です」
銀の顔も見ないで彼の横を通り過ぎようとした。
「待てよ」
「お先に失礼します」
「聞こえなかったのか? 待てと言ったんだ」
私の腕を掴み体を壁に押し付けてくる。
「やめて、人が見てる」
「今朝のこと、どういうことだ?」
「言ったとおりだよ。もう私のことは放っといて! それと、部長補佐は他の人に変えて下さい」
「バカ言ってんじゃねぇよ」
「どうせ、私はバカだから……銀とは不釣合いなんだよ」
「それは、俺が決めることだ」
銀の吊り上がった目から怒りが伝わってくる。
どうして怒るの? 私は"最悪の女"なんでしょ? 借りを返したら捨てるつもりなんでしょ?
掴まれた手首が痺れて感覚が無くなっていく……
「離して……」
「ちゃんと説明するまで離さねぇ」
更に銀の手に力が入った時だった。銀の肩を誰かが掴んだ。
「よせ、女をそんな手荒に扱うもんじゃないよ」
「あぁん?」
声の主は、赤毛さんだった。
「お前には関係ないことだ。すっこんでろ!」
すると赤毛さんは乾いた笑みを浮かべ「そうでもないんだよ」と私と銀の間に割り込んでくる。
「桃尻ちゃんは、今から俺とデートなんだから」
「はぁ? いい加減なこと言ってんなよ。ボケ!」
「それなら、本人に聞いてみ?」
赤毛さんが私に目で合図する。それが銀には気に入らなかったんだろう。今度は私の胸倉を掴み怒鳴る。
「ミーメ、答えろ! どうなんだ?」