この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
「な、何、言ってんの? 私達、まだ付き合ってもないのに……」
「俺、そんなの全然、気にしないよ。付き合ってるとか関係ない。そうやって、ズバッと言ってくれる子、めっちゃ新鮮でビビッときた。是非、妻にしたい!」
赤毛さんが気にしなくても私が気にする。それに、妻だなんてありえない。
赤毛さんは私の気持ちなんて一切無視! ひとりで盛り上がってる。でも、そんな子供みたいな赤毛さんに癒されたのも事実だ。
そこからは銀のこと忘れたくて、いつもの調子でお酒をガブ飲み。いい具合に酔っ払い、ストレス発散! とばかりに大騒ぎ。
日付が変わり、そろそろ帰ると言う私を赤毛さんはタクシーで送ってくれた。
隣に座ってる彼を見て、ある疑問が湧き上がってきた。
赤毛さん、どうて何もしてこないんだろう? 普通だったらホテルとか誘ってきてもおかしくないのに……
別に期待してるワケじゃない。あの時もそうだったから……
彼の部長室で、もう少しでキスしそうだったのに、赤毛さんは寸前でやめた。
「ねぇ、昨日、なんでキスしなかったの?」
「えっ? キス?」
「途中でやめたじゃない」
「あ、あぁ、それは……アレだ。失恋して落ち込んでる女に、マズいかなって……」
「……そう」
赤毛さんの優しさを感じて、なんだかちょっぴり心が温かくなる。
そうこうしてる間に、タクシーが『エデンの園』の前に到着し、お店を見た赤毛さんが驚いた様に窓から身を乗り出す。
「スゲーとこに住んでんだな」
「うん、おかまちゃんの園なのだ~」
タクシーを降りた私は、調子に乗って大声を上げる。
「じゃあな、俺のワイフ~愛してるよ~」
赤毛さんも酔っ払っているせいか声がデカい。
が、笑顔で手を振り、気分良く振り返った次の瞬間、私は笑顔のまま、体が固まる。そして、一気に酔いが冷めていく……
「うそ……銀」
「誰がワイフだ?」
銀の後ろには、キャサリンママまでが眉間にシワを寄せ立っていた。