この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
赤い髪の男性――そんな人、この会社にはひとりしか居ない。
「あの作戦はどうなったのよ? そんなじゃ困るわ。そもそも、言い出しっぺは椎名部長なんだから!」
作戦? 言い出しっぺ? なんのこと?
「分かってるよ……でもさぁ、もうやめねぇか? こんなバカげたこと」
「はぁ? 今更、何言ってんの? もう少しでウマくいくのに……それより、椎名部長は神埼さんのこと誘惑出来たんでしょうね?」
「あ、んっ……まぁ……」
「まさか、まだ何も?」
「いや、キスはしたけど……」
「キス? 呆れた~それだけ? なんでヤっちゃわないよ!」
おいおい、なんだ、この会話。
「椎名部長言ったわよね? 神埼さんなんて、1日で落とせるって」
「……あぁ、確かに言ったけど……」
私を落とす? それって、まさか……
一瞬にして全身に鳥肌が立ち、力が抜けてよろめく。そんな私を後ろに居た銀が抱きとめてくれた。
「どうやら俺たちは、アイツらにいい様におちょくられていたみたいだな」
「どうして? なんでそんなこと……」
「相変わらず鈍いな。要するに、アイツらふたりの思惑が一致して、こんな面倒くせぇ罠を仕掛けてきたってワケだ」
イマイチ私には、その理由が分からない。
「ったく……まぁ、とにかく本人に聞くのが一番ってことだ」
「えっ? えっ? 本人?」
銀は私の頭をポンポンと軽く叩き、ニッコリ笑うと勢い良くドアを開けた。
「さ、沢村……部長?」
「どうして部長が……」
顔を引きつらせ青ざめる赤毛さんと田村さんに銀は鋭い視線を向け、低い声で言う。
「その話し、もっと詳しく聞かせてくれよ」