この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

さっきまでの勢いはどこへやら……押し黙る田村さん。


すると赤毛さんが凄い勢いで駆け寄って来て、私の目の前に跪く。


「ごめん。本当に、ごめん……アンタのこと騙してたワケじゃないんだ。初めは、ちょっと優しくして、その気にさせたら抱くつもりだった……

でも、今は違う。今は本気でアンタのことが……」

「赤毛さん」

「信じてくれ! 嘘じゃない!」


必死で訴える赤毛さんを見てるとその言葉が嘘とは思えなくて、強くは出れなかった。


「だからあの時、キスしなかったの?」

「あぁ、あんな邪な気持ちでキスなんか出来なかった」


そう言うと赤毛さんは深々と頭を下げる。それを私の隣で眺めていた銀が何を思ったか、赤毛さんの頭をパコンと殴る。


「ちょっ、銀、何するのよ。赤毛さん謝ってるのに!」

「お前はアホか? お人好しにもほどがある。おい、ニンジン頭! 全部綺麗に吐け。それと田村君、お前もだ」


銀に名前を呼ばれ、ビクッと体を震わせた田村さんの顔が見る見るうちに泣き顔へと変わっていく。


「神埼さんが……憎かった。部長の補佐の座を奪われ、悔しくて堪らなかった。別に美人でも才能があるワケでもない神埼さんに負けるなんて……私のプライドが許さなかったのよ」


どうでもいいが、酷い言われようだ。


「そんな時、椎名部長に声を掛けられたの。"部長を取り戻したくないか?"って……

自分は沢村部長が居るせいで、一番にはなれない。ふたりで協力して、お互いの利益になるようにしようって……」」

「ほぉ~利益ねぇ」

「そう……私が沢村部長と親密だと神埼さんに思わせ、ショックを受けた神埼さんを椎名部長が慰める。抱いてしまえばこっちのもの。

動揺した沢村部長は仕事どころじゃなくなる。そうすれば、第3フロアの成績だって下がるはずだって……そして私は沢村部長と……」


そこまで話すと田村さんは号泣。赤毛さんはうな垂れ、銀は呆れた様にため息をついた。


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