この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

「じゃあ、銀がヘッドハンティングされるって話しは?」

「そんなの嘘よ!」


吐き捨てる様に田村さんが怒鳴ると銀が「えっ?」と声を上げた。


「なんだ……嘘かよ。期待してたのに……」


期待してたのかよ!


「で、ニンジン頭。ミーメのことが好きってのはマジなのか?」

「あぁ、好きだ。あんなにハッキリ意見してくれる女なんて、そう居ないからな。俺は諦めないぞ」


何気にモテモテの私。悪い気はしない。


「残念だが諦めろ。ミーメを相手にするのは至難の業だ。とてもニンジン頭の手には負えねぇよ」


それって、どういう意味よ?


「それに、俺はミーメに惚れてる。手放すつもりはサラサラ無い」


ヤダ、銀たら、そんなハッキリ"惚れてる"なんて言われたら、私……


「ミーメ、ヨダレを拭け」

「あい。ジュル……」


余りの嬉しさに有頂天になって銀に纏わりつく。すると赤毛さんが怖い顔して怒鳴る。


「調子のいいこと言うなよ! なら、田村さんとはどうなんだ? 付き合ってるんだろ?

桃尻ちゃん、騙されるな。コイツは女タラシのスケベ野郎だ」

「え゛?」


引きつった顔で銀を見上げると彼はシラッとした顔で「付き合ってはない」って断言した。


「嘘つけ! 田村さん、アンタそう言ってたよな。本当のこと言ってやれよ」


全員の視線が田村さんに集中する。


「あ、あの……」


田村さんが口を開いた時、銀が私の肩を抱き「帰るぞ」とクルッと向きを変え歩き出した。


「銀、ちょっと待って!」


怪しい。銀のヤツ、絶対、怪しい。なんか後ろめたいことあるんだ。


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