この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
日が経つにつれ、華の様子も気にならなくなり、忙しい日々にそんなことがあったことさえすっかり忘れていた。
横田さんからは、1週間に1度くらいの割合でメールが来てたけど、彼も出張で忙しいみたいで会うことはなかった。
そして、暑い夏が終わろうとしていた9月。華を保育園に送って行くと園長先生に呼び止められた。
「あ、園長先生。お早うです」
「まだ暑いねぇ~ちょっといい?」
「はい」
「実は、運動会の練習を始めたんだけど、どうも華ちゃんは気分が乗らないみたいで、本気で走ってくれないのよ。
華ちゃん、去年はかけっこでビリだったでしょ? 自信無くしてるんじゃないかと思って……
お母さんからも励ましてあげて欲しいのよ。保育園最後の運動会だから、いい思い出にしてあげたいからね」
「そうですか……分かりました」
そっか、華はかけっこ苦手だもんな~そこは私に似てしまったらしい。
その日のランチで銀にうなぎをご馳走になりながら、何気なくその話しをすると銀の顔色が変わった。
「なんだ? ハナコは運動オンチなのか?」
「うぅん。そんなことないんだけど……どういうワケか、かけっこだけ苦手なのよね」
「許せねぇ……」
「はぁ?」
「勉強も運動も一番じゃないとダメだ!」
「ちょっ、何言ってんのよ。そんなこと、保育園児に求めないでよね。華は普通に育ってくれればいいんだから」
バーン!
銀がテーブルを思いっきり叩くもんだから、うなぎちゃんがお重から飛び出し悲惨な状態に……
「もぉー! せっかくのうなぎちゃんがぁ~む」
「うるさい! ハナコに言っとけ! 明日から特訓だ!」
ったく、銀ったら……訳分かんないリーマンさんのレポート書かせたと思ったら、今度はたかがかけっこにムキになってる。アンタは華を何者にしたいのよ。
それより、うなぎちゃんをなんとかしてよ! あぁ~もったいない。
あ、そうだ。もう一つ、銀に聞きたいことがあったんだ……