この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

日が経つにつれ、華の様子も気にならなくなり、忙しい日々にそんなことがあったことさえすっかり忘れていた。


横田さんからは、1週間に1度くらいの割合でメールが来てたけど、彼も出張で忙しいみたいで会うことはなかった。



そして、暑い夏が終わろうとしていた9月。華を保育園に送って行くと園長先生に呼び止められた。


「あ、園長先生。お早うです」

「まだ暑いねぇ~ちょっといい?」

「はい」

「実は、運動会の練習を始めたんだけど、どうも華ちゃんは気分が乗らないみたいで、本気で走ってくれないのよ。

華ちゃん、去年はかけっこでビリだったでしょ? 自信無くしてるんじゃないかと思って……

お母さんからも励ましてあげて欲しいのよ。保育園最後の運動会だから、いい思い出にしてあげたいからね」

「そうですか……分かりました」


そっか、華はかけっこ苦手だもんな~そこは私に似てしまったらしい。


その日のランチで銀にうなぎをご馳走になりながら、何気なくその話しをすると銀の顔色が変わった。


「なんだ? ハナコは運動オンチなのか?」

「うぅん。そんなことないんだけど……どういうワケか、かけっこだけ苦手なのよね」

「許せねぇ……」

「はぁ?」

「勉強も運動も一番じゃないとダメだ!」

「ちょっ、何言ってんのよ。そんなこと、保育園児に求めないでよね。華は普通に育ってくれればいいんだから」


バーン!


銀がテーブルを思いっきり叩くもんだから、うなぎちゃんがお重から飛び出し悲惨な状態に……


「もぉー! せっかくのうなぎちゃんがぁ~む」

「うるさい! ハナコに言っとけ! 明日から特訓だ!」


ったく、銀ったら……訳分かんないリーマンさんのレポート書かせたと思ったら、今度はたかがかけっこにムキになってる。アンタは華を何者にしたいのよ。


それより、うなぎちゃんをなんとかしてよ! あぁ~もったいない。


あ、そうだ。もう一つ、銀に聞きたいことがあったんだ……


< 184 / 278 >

この作品をシェア

pagetop