この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

赤毛さんの優しさに甘え、私は泣き続けた。で、いつしか泣き疲れ、寝てしまったようだ。


睫毛が涙でカピカピに乾き、おまけに瞼が腫れてるから、なかなか眼が開けられない。


きっと凄い顔してんだろうな……


そう思いながら瞼をこじ開けるとおばあちゃんが枕元に座っていた。


「目が覚めたかい? 話しはあの子から聞いたよ。辛かったね……」

「……おばあちゃん」

「社長の娘か……怜香さんって名前だったかねぇ~あの人は手強いよ。とにかく気が強い」

「そうなの?」

「あんな女より、神埼さんの方がずーっと可愛いよ。だから沢村部長も神埼さんと居たかったんじゃないのかな?」


おばあちゃんの穏やかな声と口調に癒される。


「とにかく、ヤケを起こしちゃダメ。ちゃんと本人に確かめること! いいね?」

「うん、でも連絡取れないの。出張から帰って来るのは1ヶ月後なんだ……」

「じゃあ、気長に待つんだね。彼を信じて……」


信じる? 銀を信じて待つ? 私にそんなこと出来るかな? でも、待つしかない。


「そうだね。そうするよ」


少しだけ、笑顔になれた。




――でも、銀に確かめるチャンスは思いの外早くやってきた。


あのメールが来て5日後。夜、銀から電話があったんだ。


『元気にしてたか?』

「……うん」

『なんだ? 元気無い声だな?』

「色々あって……」

『あの産業スパイにでも会ったのか?』

「そんなんじゃない。メールが来たの』

『メール?』

「そう、銀と……その……社長の娘の怜香さんが、子供連れて買い物してる写真が……」


沈黙が続いた――


「あの男の子……銀に凄く似てた」


銀の返事は無い。


「銀……? ねぇ、あの子……誰?」


そして、また長い沈黙の後、やっと銀の声が耳に届いた。


『あの子は、俺の……』


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