この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
「……俺の? 何?」
『俺の……身内だ』
身内? 都合のいい言葉だね。
「どんな身内なの?」
『どんなって、ただの身内だ』
「会社じゃね、あの子、銀の隠し子だって噂になってるよ」
すると銀は呆れた様な声で『隠し子? バカじゃね?』と微かに笑った。
「本当のこと言って? 私、平気だから……銀と怜香さんは付き合ってるんだよね? 将来は結婚……」
『黙れ!』
「銀……」
『俺のことが信じられないなら、もういい!』
――ブチッ…
言い訳もしなかった。ホントは、銀が言い訳してくれるの待ってた。どんなバレバレの嘘でもいいから、言い訳して欲しかった。
そして、俺が好きなのはミーメだけだって言って欲しかったのに……
大粒の涙が真っ黒になったディスプレイを濡らす。
この電話を境に銀からの連絡は途絶え、憂鬱な日々が続く。
――銀が出張に行って2週間
仕事が終わり、橋倉さんと会社のビルを出ようとした時、橋倉さんが私のスーツの裾を引っ張った。
「神埼さん、あの人……」
横目で私に合図する。
「なんですか?」
「……秘書課の鳳来怜香さんよ」
自分でも驚くほどビクッと体が反応した。高鳴る胸を押さえ、ゆっくり振り向くとそこには長身でスレンダーな女性が重役らしき男性と立ち話しをしてた。
ブランド物のグレースーツを嫌味なく着こなし、背筋をピンと伸ばしたその姿は、いかにもキャリアウーマンって感じだった。
その横顔は、とても上品で教養の有るお嬢様に見えた。
私とは、正反対の人……