この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
「それは……どいうこと?」
「うぅっ、聞くも涙、語るも涙の物語……」
いつから私と銀のことが物語りになったのよ!
「橋倉さん、飲み過ぎですよ。横田さん、今のは彼女の妄想ですから気にしないで」
「いや、違うな。橋倉さん、教えて下さい」
「そーこなくっちゃ!」
私の手を払いのけ、橋倉さんが銀のことを話し出す。
うわぁ~橋倉さん、酒癖悪過ぎだよー!
キャサリンママも呆れた様に首を振る。
橋倉さんの独演会と化した店内。その話しを食い入るように聞いてる横田さん。
そして、最後まで話しを聞き終え、大きく息を吐き出した横田さんは、一言……
「許す訳にはいかないな」
そう言って、血走った眼で私を見た。
ゾゾゾ~…ッ
そんな私達のことなどお構いなしの橋倉さんはひとり盛り上がり、おかまの茜ちゃんにデコピンしてる。
もう絶対、この人とは飲まない。そう心に決めた時、横田さんが何も言わずスクッと立ち上がり、私の手を握った。
「何も心配することは無い。僕が、その沢村って男に鉄拳を食らわしてやる」
なんて物騒なことを言うと横田さんはサッサと帰ってしまった。
何をする気なんだろう?
でもまぁ、横田さんも酔ってたし、明日になったら冷静になるだろう。なんと言っても、彼は大人で社会的にも地位のある立場の人だもんな。変なことはしないだろう。
だから、それほど気にもしてなかったんだ。
それより、彼女をなんとかしなきゃ。茜ちゃんがデコピンの連打攻撃で気絶しそうだ。
「もぅ! 橋倉さーん、茜ちゃんが可哀想でしょ?」
「んぁあ~? これしきのことで根を上げるとは、根性が足りん! ホレ、ホレ!」
「きゃ~痛ーい! お姉さん、やめてぇ~」
ダメだこりゃ……
そんなこんなで、橋倉さんはまた支払いをせずに帰って行った。
なんちゅー人だ! 彼女が40歳まで独身だった理由が、少し分かった様な気がした。