この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
――そして、数日が過ぎ、銀の帰りを待ちわびている私に横田さんから会いたいとメールが来た。
明日は横田さんの誕生日だそうで、一緒に食事して欲しいとのこと。
高価なお土産も貰ったことだし、それに彼が銀のことまだ怒ってるのかも気掛かりだったから即OKした。
次の日、仕事を終え、横田さんとの待ち合わせ場所のホテルへ向かう。以前、彼とフレンチを食べ泊まったホテルだ。
一階のラウンジでコーヒーを飲んでいた横田さんを見つけ手を振ると横田さんは立ち上がりニッコリ笑った。
「横田さん、お誕生日おめでとう」
「ありがとう。来てくれて嬉しいよ」
彼にエスコートされエレベーターに乗り、あの最上階のフレンチレストランへ……相変わらず場違いな雰囲気に緊張気味の私。
案内されたテーブルに腰を下ろすと昨日、仕事帰りに買ったプレゼントを彼に渡す。
「ほーっ、素敵なネクタイじゃない。気を使わせちゃったね。でも、ミーメちゃんからのプレゼントは誰から貰うプレゼントより嬉しいよ」
早速、自分のネクタイを外し、私のプレゼントしたネクタイを締め、満面の笑みでソレを手に取り眺めてる。
ありがたいことだけど、そのネクタイはセールで3本1万円だったやつを店員さんに無理言って1本で売ってもらったんだよね。おまけに値切って3千500円を3千円にまけてもらった。
そんなに喜ばれると複雑だ。
で、前菜を食べ終えた横田さんがフォークを置きながら私に視線を向ける。
「あの彼氏から連絡あった?」
「え、あっ、まだですけど」
「困った男だ。どんなに仕事が出来ても誠意の無い奴は最低だ」
「はあ……」
口を拭ったナフキンをテーブルに投げ捨てる横田さん。
「そんな男なんて、別れてしまなさい」
「へっ?」
余りにもキッパリと言われ、驚いて顔を上げると横田さんは眉間にシワを寄せ握り締めた手を震わせていた。
どうしてそんなに怒るの? 私のことが好きだから?
なんて答えていいか分からず、困って横田さんの顔を見つめた時だった。
来店してきた一組のカップルが視界の隅にチラリと入り込んだ。