この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
薄明かりの街灯に照らされたその不審人物の顔を見て、もひとつ、ビックリ!
スゲ~男前……ゴクッ!
「俺、朝からなんも食ってないんだよな〜ソレ、ちょっと食わせてくれよ」
いくら男前でも……「それは、無理」
「なんで?」
「なんでって……男の人に、それも、見ず知らずの貴方に、どうして自分の夕飯あげなきゃいけないの?」
柔らかそうな栗色の髪をかきあげると男前の不審者は私の横にドカリと座った。
「小学生の時、困った人が居たら助けてあげましょう。て、先生に教わらなかったか?」
「確かに、言われたことある様な気がする……」
「だろ? まさしく今がその時だ! 俺は非常に困ってる。腹がへって死にかけてる」
「そう?」
とても死にかけてる様には見えないけど……
「いいから、よこせ!」
突然、野獣の様に私のお弁当を掴み取り上げようとしてきた。
「ちょ、ちっとーやめてよ!」
「うるさい! 静かにしろ!」
「いゃぁ~ダメ~」
夜の公園に響き渡る切羽詰まった男女の声ーー
知らない人が聞いたら、私が襲われてると思うだろう。よもや、お弁当を取り合ってるとは想像もつくまい。
「くれ!」
「ヤダ!」
が、その時……
「あぁぁーっ!」
……ポチャン。
割り箸がベンチ横の溝に落ちてしまった。