この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
ママの巨体を必死で引きずり、なんとかソファーに転がすと私は華の手を引き部屋に向かう。
一応、恐ろしい光景を見ない様にノックしてドアを開けた。
そこには、ガン首揃えた横田さんと橋倉さんの笑顔があった。
「ミーメちゃん、華ちゃん。お帰り」
超ご機嫌の横田さん。
「横田のおじちゃんと、飲み逃げの橋倉さん。どうして華の部屋に居るの?」
「あ、華ちゃん……飲み逃げじゃないのよ。後でちゃんと支払いして帰るからね」
華、よく言った。ママが喜ぶよ。
すると横田さんが「華ちゃん、ここに座ってくれるかな」って真剣な顔で言うものだから、華は警戒しだす。
「悪いお話し?」
「いや、いいお話しだよ。華ちゃんには、おじいちゃんが居るってミーメちゃんに聞いただろ?
あれはね、僕のことなんだよ。僕が華ちゃんのおじいちゃんなんだ」
大きな瞳を更に大きく見開き、華が無言で私の顔を見上げる。私が頷くとその瞳に涙が溢れ出した。
「横田のおじちゃんが……華のおじいちゃん? ホントなの? 絶対の絶対?」
「あぁ、間違いなく、僕が華ちゃんのおじいちゃんだ」
ニッコリ笑った横田さんの胸に飛び込む華。
「やったー! やったー! 横田のおじちゃんが華のおじいちゃんだー」
感動の一場面。思わず、もらい泣きしてしまう。けれど、横田さんの腕に抱かれながら、華がボソッと言った。
「ねぇ、ところで……橋倉さんは何しに来たの?」
「それはね、僕と彼女は結婚するんだ。橋倉さんは、華ちゃんのおばあちゃんになるだよ」
華の顔が見る見る内に強張る。
「飲み逃げの橋倉さんが……華の……おばあちゃん?」
「飲み逃げは余計だけど、そうだよ。橋倉さんは、華ちゃんのおばあちゃんになるんだ」
涙が止まり、シラケた顔の華が小声で呟いた。
「ありえねぇ~…」