この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
PART FOUR
○約束
華の運動会まで、後3日――
銀からは、まったく連絡がない。
横田さんにあんなに責められてたもんな……怒ってないってこと無いよね。もう私のこと面倒くさくなっちやったのかもしれない。
それなら、それでいい。私も、そろそろ吹っ切らないと……
そんなことを考えながら、忙しくパソコンに向かっていると内線が鳴る。
「……なんだ、赤毛さんか」
『なんだは、ないだろ? すっげ~ビックニュース教えてやろうと思ったのに……』
「何?」
『俺、今からアポだから、手短に言うぞ。これも親父経由で入ってきた話しなんだけど、あの鳳来怜香さんが婚約するらしいぞ』
「こん……やく?」
心臓がドクンと大きく音をたてた。
「相手は……」
『それは、親父もハッキリ聞いたワケじゃないから詳しいことは分かんないんだけどさ、秘書課の女の子達が騒いでたらしい。今度の土曜、どっかのホテルで結納だって。
とにかく、そういうことだから……アポから戻ったら話そう』
「……分かった」
受話器を持つ手が小刻みに震えている。
怜香さんが婚約……もちろん、相手は銀なんだよね。
私の知らない所で、そんな話しが進んでたんだ。だから銀は私を避けてたんだ……
今度の土曜日――華の運動会の日だ。
赤毛さんが帰って来たのは、お昼休みの少し前。コンビニでお弁当を買ってきて、誰も居なくなったオフィスで秘密の会議が行われた。
集まったのは、また例の4人。未だに、なぜ田村さんが参加するのかが不明だ。
銀と怜香さんの婚約に全員が色んな意味でショックを受けていた。中でも一番怒りを露にしていたのが橋倉さんで、かなり興奮してる。
「信じられないわ! 神埼さんに、なんの説明も無いまま婚約だなんて。私、部長に失望したわ!」
「そーだ! そーだ! そのとーり!」
赤毛さんが横から空気を入れるものだから、橋倉さんは益々ヒートアップ。
「こうなったら、その結納の席へ乗り込んで破談にしてやろうかしら」
「そーだ! そーだ! 行っちゃえ! 行っちゃえ!」