この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
ふたりの暴走を冷静な眼で眺めてた田村さんが、ボソッと言う。
「そんなバカなこと出来るものですか。実際にそんなことしたら、会社をクビになるわよ。
でもまぁ、よくよく考えてみれば、あのふたりが結婚するのは必然なんじゃない?」
「どういうことよ!」
橋倉さんが大声を上げ、田村さんを睨みつけた。
「だって、そうじゃない。ふたりの間には子供が居るワケでしょ? 今まで何か事情があって結婚しなかっただけで、いつかは結婚する約束になってたのよ。
だから部長も、この会社に入ったんじゃないの?」
「なるほど……」
田村さんの意見に納得して頷く赤毛さんとは対照的に、橋倉さんは真っ赤な顔をしてワナワナと震えだす。
「子供? 子供が何よ! 部長の子供なら、こっちにも居るわ!」
ゲッ! 橋倉さんたら、余計なことを……
「な、橋倉さんったら、何言ってんのよぅ~」
「神埼さんも神埼さんよ! 早く部長に華ちゃんのこと言えばいいのに、グスグスしてるからこんなことになるのよ!」
「別に、グズグズしてたワケじゃ……」
「してたじゃない!」
橋倉さん、怖ぇ~
「ちょっと、子供が居るとか、何それ?」
「そーだ! そーだ! なんだそれ?」
田村さんと赤毛さんが怪訝な表情で私と橋倉さんを睨んでる。
「あ、それは……」
なんとか誤魔化せないものかと思案している間に、イラついてる橋倉さんが大暴露!
「神埼さんにはね、娘が居るのよ!」
「はぁ? 娘?」
「そうよ。部長との間に出来た華ちゃんっていう6歳になる娘がね」
「ええぇーっ!」
「うっそー!」
ヤダ、言っちゃった……
肩で息をしながら"言ってやったり!"って満足そうな顔で仁王立している橋倉さん。
眼がヤバい。完全にいっちゃってる。