この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
椅子からズリ落ちた赤毛さんが、私を見上げながら言う。
「ちょっ、ちょっと……桃尻ちゃん、ホントなのかよ?」
「あ、うん。まぁ……」
「まいったなぁ~スゲー展開」
赤い髪をクシャクシャにしながら頭を抱える。
「もぅ~橋倉さんたらぁ、誰にも言わないでって言ったのに~」
ため息混じりに橋倉さんを突っつくと小声で「だって、娘を不幸にするワケにはいかないもの」なんて、もう母親気取りだ。
全員が押し黙り、変な空気が流れたその時、田村さんがスクッと立ち上がり、また私を指差し言ったんだ。
「神埼さん、あなた、それでも女なの?」
「えっ、そのつもりだけど……」
「じゃあ、女の意地を見せてみなさいよ!」
「女の意地?」
「そうよ! 子供が居るって条件は怜香さんと同じ。違うのは怜香さんがご令嬢で、あなたが貧乏ってことくらいじゃない! 部長を奪ってやりなさい」
「うば……う?」
「そんなの当然じゃない! 何遠慮してんのよ。私が泣く泣く諦めてやった部長をそう簡単に他の女に渡さないで欲しいわ」
田村さん……
「あなたと部長が愛し合ってるって言うから、仕方なく私は身を引いたのに……そんなの詐欺だわ!」
それを聞いた赤毛さんが慌てだす。
「えっ? アヤぴー……まさか、まだ沢村部長のこと……」
「いゃ~ん。違うわよぅ翔タン! 今は翔タンだけだって~」
「ホント? あんな種馬みたいなヤツのことなんて、考えちゃイヤだよ」
「もぉ~翔タンたらぁ~ヤキモチだなんて……可愛い」
なんだ、コイツら……超キモいんだけど……それに、銀は種馬なんかじゃないっつーの!
私のこと心配してくれていたはずなのに、どっぷりふたりの世界に浸って戻って来そうもない赤毛さんと田村さん。イチャイチャがエスカレートして眼のやり場に困る。
橋倉さんと顔を見合わせ苦笑いしてると電源をつけっ放しにしていた私のパソコンにメールが届いた。
何気なくソレを確認した私は、呆然とする。
「えっ、マジ?」