この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
「私じゃ、ダメなんだね」
小さなため息をつき、下を向く私の頭を銀がパコンと叩く。
「弱音を吐くな! お前が諦めてどうする? 俺はハナコと約束したんだ。ミーメと結婚するてっな」
「でも……」
「俺はハナコの父親だ。ハナコを幸せにする義務がある」
「銀……」
銀のその言葉を聞いて、横田さんの顔が浮かんだ。
「父親って、娘が可愛いんだよね。私も横田さんに同じ様なこと言われたよ」
「当然だろ? ハナコは頭もいいし、根性もある。俺にそっくりだ」
「もし華がバカで根性無しだったら、私と結婚しようとは思わなかったの?」
ちょっと意地悪なこと聞いてみた。
「そうだ」
「えぇーっ! マジ?」
銀の膝の上でバタバタ暴れているとまた銀が私の頭をパコンと叩く。
「バカ! 冗談だ。でも、横田さんがミーメの父親だったとはな……聞いた時は、腰が抜けそうだったなぁ~」
「えっ? そうなの? 銀ったら、全然動揺してなかったじゃん」
上目遣いで見上げけば、そこには、少しはにかんだ銀の顔があった。
「あの状態で俺が取り乱すなんてできるかよ。それに、横田さんがミーメの父親と知って、正直ホッとしたしな」
「なんで?」
「そりゃそーだろ! 前の日に、お前とホテルのレストランで食事してたヤツだぞ? どう見ても、ただのお友達って関係じゃねぇだろ?」
「えっ? じゃあ銀は、私と横田さんがデキてるって思ってたの?」
「当然そう思ってた。例の怪メールのこともあって、怜香と俺のこと疑ってたからな。俺が離島に行ってる間にもしかして……ってな。でもな、父親ならミーメに手出すことは無い。だから安心した」
「もぉ~銀ったら、私にベタ惚れじゃん!」
優越感に浸り、高笑いする私の首を銀が本気で絞めてくる。
「ぐっ、ぐるじい……放じでぇ~」
「調子に乗るな! バカミーメ!」
「もうっ! それならレストランで会った時に怜香さんのこと言ってくれれば良かったのに!」
銀を睨むと彼は呆れた様に天井を見上げる。
「そんなこと出来るワケねぇだろ? 怜香は、俺とミーメを別れさせたいって思ってたんだぞ! そんなヤツにお前を紹介出来るか!」
「あ、そっか」