この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
――そして、結婚話しがなかなか進まないまま月日は流れ、季節は人肌が恋しくなる寒い冬を迎えていた。
銀は口には出さないけど、かなりイラついているみたいで、一緒に居ても考え込む姿を多く見るようになっていた。
仕事帰りに来たホテル。私を抱いてる時も、どこか上の空。終わった後、私の髪を撫でながらため息をついてる。
「銀、大丈夫?」
「何が?」
「だから、結婚は、急がないから……」
何も言わず目を閉じる銀。
「私、別に結婚にこだわらないから。このままでもいいんだよ」
横目でチラッとこちらを見た銀が突然、私の上に乗っかってきた。そして、歯がぶつかるほど乱暴なキスをすると纏っていた薄い掛け布団を剥ぎ取り、床に投げ捨てる。
「銀……」
「黙ってろ」
まるで獣みたいに私の体に唇を這わせる。それは快楽を求めるというより、何かを忘れようとしてるみたいだった。
繋がった体からは、銀の"愛"より"怒り"を感じた――
銀は苦しんでる。私と華を守ろうと、もがき苦しんでる。
本能のままに果てた銀の胸にそっと寄り添いキスをすると銀は寂しそうな笑顔で私を見上げた。
「籍を……入れる」
「えっ?」
「既成事実を作る」
「でも、そんなことしたら……」
「ハナコも小学生になる。それまでになんとしてもミーメと結婚する」
銀は華のこと、ホントに愛してくれてるんだね。その気持ちは何より嬉しい。でも、そのことで銀を追い詰めているんじゃないかと胸が痛む。
「私も華も、銀が傍に居たてくれるだけで十分だからね」
愛されてるって分かってるから……だから無理しないで……
私は既に結婚は諦めていたのかもしれない。駆け落ちなんてありえないこと。それに、大企業の御曹司の銀が全てを捨てて私を選んだことを将来、後悔したら……そう思うと辛かった。
でも銀は、私の想いとは全く違うことを考えていたんだ。