この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
12月も半ばを過ぎ、世間はクリスマスモードに突入。夜の街にはイルミネーションが瞬き、ジングルベルが鳴り響いていた。
楽しいはずのクリスマスも、今年はなんだかどうでも良くて、私は銀の顔色を伺う毎日を送っていた。
昼から部長室の資料整理を手伝っていると銀がデスクの引き出しから一枚の紙を取り出し、私の目の前に置く。
「銀、これって……」
「サインしろ」
「でも……」
それは、初めてナマで見る婚姻届だった。
「俺からミーメへのクリスマスプレゼントだ」
頬杖をつき、銀がニッコリ笑う。
「いつでも出せる状態にしておきたいからな」
そこには、既に銀の署名と捺印がされていて、私が名前を書き印鑑を押せば提出することが出来る状態だった。
「社長さん達は? どうなの? まだ許してくれそうにないの?」
銀は"なぜそんなこと聞く?"って顔をして私を睨む。
「ミーメは心配しないでいい。早くサインしろ」
「うん……」
婚姻届にサインするのって、もっとドキドキするもんだと思ってた。
銀の家族に反対されたままでコレを書くことは、正直気が引けて、嬉しさとか喜びとか、余り感じなかったんだ。
「印鑑、持ってくるね」
そう言って部長室を出ると何か大きなモノに押しつぶされそうな恐怖が襲ってくる。
ホントに、いいのかな?
戸惑いながらも、自分の名前の横に"神埼"の印を押す。
これが受理されれば、私は"沢村美衣芽"になるんだ。
漠然とそんなこと考えてると銀が後ろから私を抱きしめ頬にキスしてくる。そして、とんでもないことを言い出したんだ。
「俺は、最後の賭けに出る」
「賭けって?」
「24日のイヴの日、俺の家で怜香も兄貴も来てホームパーティーがある。身内が集まる絶好のチャンスだ。その席で、俺はミーメとの結婚を報告をする」
えっ?
「ちょっと待って。報告って、まさか……」
「24日までに入籍して、それを伝えるんだ」
そんな強引なやり方して大丈夫なんだろうか?
「もし、それでも反対されたら、俺は家を出て、会社も辞める」