この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
なんだか、恐ろしいことになってきた。私、鳳来一族に抹殺されやしないか?
銀に婚姻届を提出する時は、絶対に事前に教えてと何度も念を押したが、銀のことだ。油断はならない。
嬉しいはずの結婚が、こんな憂鬱の種になるとは……
重い足取りで『エデンの園』に帰るとなんかいつもと雰囲気が違う。珍しくママがひとりでカウンターに座り、背を丸めて飲んでる。
「ママ~ただいま」
ふざけて後ろからママに抱きつくと……あれ? ママ、香水変えた? それに、抱き心地が微妙に違う。
不審に思って顔を覗き込むとデッカい目ん玉がギロリと動き、私を見た。
「なによアンタ! 私は女に興味無なんてないわよ!」
「ゲッ! 私だって、そんな趣味無い!」
後姿はママにそっくりだったけど、顔が違う。
その、いかにもママ達と同類と思われる"女性"は、私をガン見すると「ははん!」と言ってニヤリと笑った。
「アンタ、ミーメって娘(こ)でしょ?」
「そ、そうですけど……」
「私はキャサリンの知り合いでマサコよ」
「マサコ……さん?」
しかし、このマサコさんとママ、体型が瓜二つだ。もしかして兄弟とか? もしそうなら、ご両親がお気の毒。兄弟揃ってこんなだもんな~
勝手に兄弟だと決めつけ、親に同情しているとママがカウンターの奥から顔を出す。
「あら、ミーメちゃん、おかえり~」
「ねぇ、今日はお店休みなの?」
「そうなのよ~お店の子達が皆インフルエンザでダウンしちゃってね。暇だったから、マサコを呼んで飲んでたのよ。
あぁ、マサコはこの世界に入った時の同期の桜でね。同じお店で働いてたの。今じゃ、お店を幾つも経営するオーナーさんよ」
「へぇ~兄弟じゃなかったんだ……」
「はぁ~兄弟?」
私の言葉に大笑いするマサコさん。
「実はね、マサコに来て貰ったのは、昔を懐かしむ為だけじゃないのよ。マサコの経営するおかまバーに、鳳来物産の社長が来るって聞いたことあったの思い出して……情報収集しようと思って呼んだのよ」
「えっ! マジ?」
銀のお父さんがおかまバーの常連と聞き、少し近親感を覚えた。
「マサコさん、社長ってどんな人ですか?」
断りも無くマサコさんの隣に座り、彼女に詰め寄る。