この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
到着したのは、あの大豪邸。緊張するなって言う方が無理だ。眠ってる華を落としそうになりながら、銀の後ろをついて行く。
以前来た時とは庭の雰囲気がかなり違ってた。所々に植えてあるコニファーには、クリスマスの飾り付けがしてあって、イルミネーション用の電球が巻き付けてある。
意外だな。社長宅でもこんなことするんだ。
大きなリーフが掛った玄関の扉を開け、銀が家の中に入っていくのを必死で追いかける。
「銀、待ってよ~」
「トロトロしてんじゃねぇよ。こっちだ」
銀も少し緊張してるのか、口数が少ない。
案内されたのは、長い廊下を散々歩き、辿り着いた洋間だった。
全面ガラス張りになっている掃き出しは、さっきの庭が一望出来る様になっていて、床には噂で聞くペルシャ絨毯らしきモノが敷いてあり、家具も猫足のロココ調で統一されてる。
さすが大企業の社長宅だ。この部屋の調度品は全部でいくらするんだろう? 想像するだけで冷や汗が出る。
まだ眠ってる華をソファーに寝かせ、ため息をつく。
「ここで待ってろ」
「えっ? 銀どこ行くの?」
こんなとこでひとりにされたら、心細くて泣いちゃいそうだよ。
「親父を連れてくる。大丈夫だ。この部屋は客間だから誰も来やしねぇよ」
「う、うん……」
ぎこちない返事をする私の頭をポンポンと軽く叩き、銀は部屋を出て行った。
しかし……この時点で吐きそうなのに、社長さん達、特に奥さんに会ったら、私、どうにかなっちゃいそうだ。
ママ~どうしよう~
部屋の真ん中に居ると落ち着かなくて、窓際をウロついていると庭で何かが動いた様な気がした。ガラス越しに目を細め庭を眺めてみたら、脚立に乗った男性が一生懸命、大きなハサミで植木の枝を切っている。
作業着を着てるし、植木屋さんかな? クリスマスなのにご苦労なことだ。
そう思い目を逸らそうとした時、その植木屋さんがこちらを向いた。
「はっ……!!」
うそ、あれは……