この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
ありえない事実に驚いていたのは、もちろん私だけじゃない。3兄弟も口をあんぐり開けて絶句してる。
「お義母様と……神埼さんが、親子?」
怜香さんは真っ青な顔して震えてるし、副社長さんは言葉を失ってる。
「ミーメ、義母がお前の母親って、マジなのか?」
「……うん」
何があっても取り乱さない冷静な銀でさえ、動揺を隠せないって感じで目が泳いでる。そして暫くすると銀は何を思ったか、お母さんの前に立ち低い声で静かに言った。
「アンタに、ミーメの母親の資格は無い」
「えっ?」
驚いて顔を上げるお母さんに、銀は更に続ける。
「まだ高校生だったミーメを捨てて、男に走ったアンタに母親を名乗る資格など無いって言ってんだよ! ミーメがどんなに辛く悲しい思いをしてきたか……想像したことあんのかよ?
ミーメはな、ひとりで必死に生きてきたんだ。貧乏のどん底で、その日の飯にも困る様な生活してきたんだぞ! どうせ自分のことばっかで、ミーメのこなんか忘れてたんだろ?」
銀……
すると社長さんがお母さんの背中を摩りながら「それは、違う!」と首を振った。
「何が違うんだ? ミーメを捨てたことに変わりは無いだろ?」
「銀之丞、正直に話すとな、私たちも切羽詰ってたんだ。美衣芽ちゃんに私たちのこと認めて欲しくて、アパートに帰って来た美衣芽ちゃんに何度も話しをしようとしたんだ。
だが、美衣芽ちゃんは全く聞き耳持たずって感じで、私の顔すら見てくれなかった」
社長さんは私を見つめ苦悩の表情でため息を漏らす。
「美衣芽ちゃんは、私の顔など覚えて無いだろうが、私は君のこと、ちゃんと覚えていたよ。だから会社の階段で君を見た時は信じられなかった。まさか、自分の会社に勤めているとは思わなかったからね。
信じてもらえないかもしれないが、ハニーは、いつも君のこと心配してたんだよ」
「心配?」
「そうだ。いつか美衣芽ちゃんを見つけて引き取りたいって、毎晩の様に言っていた。初めは私もそうしてやりたいって思っていた。
でもね、私は不安だったんだよ。ハニーが君と会ったら、私を捨ててこの家を出て行ってしまうんじゃないかと……だからハニーには、君と会ったことは言えなかった」
「じゃあ、あれ以来、連絡をくれなかったのは……」
「そうだよ。ハニーを失いたくなかったからだ」
マサコさんが言ってた通りだ。まさしく、骨抜きってヤツだ。