この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
「それに私達は、毎月、美衣芽ちゃんの通帳にお金を振り込んでたんだよ。確かに、一度も下ろされたことは無いが、それは美衣芽ちゃんがお金に困ってないからだと思っていた。まさか、食べることにも困るほどの生活をしてたなんて……」
「えっ? お金なんて一度も振り込まれたこと無かったよ」
そうだよ。何度も銀行へ行って記帳したんだ。間違い無い。
社長さんとお母さんは首を捻りながらヒソヒソ話しをするとお母さんがリビングを出て行き、数分後に戻って来た。
「ほら、これを見て。ちゃんと毎月30万振り込まれてるでしょ?」
手渡された私名義の通帳には、確かに毎月30万が振り込まれていた。でも……
「お母さん、この通帳のキャッシュカード、私、持って無い」
「はぁ?」
「私が持ってるのは、中学に入学した時に作ってもらったのだけだよ。ここの銀行のなんて持って無い」
「うそ……」
「嘘言ってどうするのよ」
「あらまぁ~ごめんなさいね~。私、勘違いしてたのかも……」
お母さんは、悪びれる様子も無くケラケラ笑っている。
なんちゅーいい加減な母親だ……
呆れてうな垂れていると銀が再び口を開く。
「金のことは一応、納得した」
はぁ? そんな早く納得しないでよ!
「で、さっきの話しの続きだが……親父たちが切羽詰っていたってアレ、なんのことだ? ミーメを捨ててまで解決しようとした問題ってなんなんだよ?」
「あ、それは……」
社長さんが答えようとした時、リビングの扉が開き、弾ける様な元気な声が聞こえた。
「もうパーティー始まってるの?」
無邪気な笑顔を見せる少年。その少年の顔に見覚えがあった。
いつか怪メールで見た銀の隠し子?
そうだ。この子のこと、すっかり忘れてた。いったい何者なの? まさか、ホントに銀の隠し子だったり? 何気に笑った顔なんか、銀そのものだ。
「今、大事な話しをしてるから、部屋へ行ってろ」
銀が冷たくあしらうと少年はムッとして社長さんに駆け寄り、銀に"あっかんべー"をする。
そして社長さんの腕を引っ張り「ねぇ、僕さぁ、友達出来たんだ。パーティーに呼んでもいい?」そう言って甘えている。
「いいけど、学校の子かい?」
「うぅん、違うよ。今から呼んでくる」
少年は嬉しそうにニッコリ笑うい、リビングを飛び出して行った。その少年の後ろ姿を目を細め見つめている社長さん。
「私とハニーが切羽詰ってた訳……それは、あの子なんだ」
「へっ?」
「美衣芽ちゃん、あの子は、駿矢(しゅんや)って名前でね。私とハニーの間に出来た息子なんだよ」