この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
「ねぇ~あなたぁ~あなたもミーメちゃんと銀之丞さんの結婚、認めてくれるでしょ?」
猫なで声で社長さんに擦り寄るお母さんに、社長さんは鼻の下を伸ばしデレデレ状態だ。
「もちろんだよ。ハニー。君がいいなら、私はいいよ」
なんと! アッサリ認められた。これには銀も驚いたのか、目を丸くしてる。
「金乃丞さんも、怜香さんもいいわね?」
ふたりは渋々ながら、小さく頷く。
会社で初めて会った時の副社長さんとは、まるで別人のよう。あの絶対的な存在感が全く感じられない。
どうしてお母さんは、鳳来家の人たちにこんなに強気に出れるんだろう? 社長さんは骨抜きだから仕方ないとしても、副社長と玲香さんはナゼ?
「あ、そうそう。ミーメちゃん、さっきの質問だけど、ミーメちゃんと銀之丞さんが兄妹じゃないかってアレ。実はね、私たち入籍してないのよ。だから、あなたたちは兄妹じゃないわ。
それに、銀之丞さんは鳳来の籍には入ってないから、私たちが結婚していても問題は無いんじゃない?」
「え、どうして? 子供が居るのに、どうして結婚してないの?」
「それはね、美衣芽ちゃん。君の為なんだよ……」
お母さんの代わりに社長さんが話し出す。
「私の為?」
「そうだよ。ハニーはね、自分が結婚したら、美衣芽ちゃんの苗字も変わる。そんなことになったら、ミーメちゃんが可哀想だと言って入籍は拒否したんだよ。
何も知らない君が突然、自分の名前が変わったらショックを受けるに決まってる。そう言ってね」
「……お母さん」
「私はダメな母親だったから……これ以上、ミーメちゃんを悲しませたくなかった。
駿矢を妊娠した時もそうだった。あなたに正直に話そうとしたけど、私を避けてたでしょ? あの状態で妊娠の事実を告げても、ミーメちゃんは許してはくれないと思ったの。
でもお腹はどんどん大きくなる。とにかく今は、駿矢を無事に産むことを優先させようと思ってアパートを出たのよ。
駿矢が産まれたら、ミーメちゃんを迎えに行くつもりだった。でも、私の産後の肥立ちが悪くて……一年以上床上げ出来なかった。
なんとか体調が戻って、あなたを迎えにアパートに行ったら、知らない人が住んでたわ」
「私を迎えに? 私は捨てられたんじゃなかったの?」
「バカな子ね。娘を捨てる親なんて居ないわよ」
そう言ったお母さんの目には、涙が滲んでいた。