この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
涙ぐむお母さんの肩を抱いた社長さんが、寂しそうな目をして言った。
「籍を入れてないから、私は不安だったんだよ。やっぱり美衣芽ちゃんのとこに帰るなんて言われたらどうしようと思った。私がもっと早く美衣芽ちゃんのこと話せば良かったんだ。すまない……」
「あなた……」
見詰め合うふたりを見て、お母さんの選択は間違ってなかったかも……そう思った。
高校生だった頃にお母さんが妊娠したなんて聞かされてたら、私は怒り狂って反対してたと思う。
自分も母親になった今なら分かる。好きな人の子供を産みたいと思ったお母さんの気持ちが……
しんみりした空気を一変させたのは、駿矢の明るい声。
「お母様、お友達を紹介するよ。入って!」
リビングの扉からひょっこり顔を出したのは、なんと華だった。
「あ、ミーメさん」
「……華」
いけない。華が居たことすっかり忘れてた。
「あら? どこのお嬢さんかしら?」
お母さんが不思議そうに首を傾げる。
「あ、あのぉ~この子は"華"って言って、私の娘なの」
一呼吸置いて、リビングは騒然となり、私と銀以外はパニック状態。お母さんたちの絶叫で、華と駿矢がビビッている。
「ミ、ミーメちゃん、あなた、子供が?」
仰天したお母さんがプルプル震えながら私に詰め寄って来た。
「そんな……子供が居たなんて……一体、どういうこと? 父親は誰なの?」
すると銀が間髪入れず「俺が父親だ」なんて言うから、今度は社長さんがソファーからズリ落ちる。
半信半疑のお母さん達に掻い摘んで事情を説明すること30分。やっと納得してくれた様で、華を愛おしそうに抱き寄せた。
「まぁ~この子が私達の孫?」
お母さんと社長さんはウルウルしながら華を撫で回しているが、華は突然現れた祖父母に戸惑い固まっている。それを面白くなさそうに見つめてた駿矢が叫んだ。
「華ちゃんは僕のお嫁さんになるんだからイジメないで!」
「お嫁さん?」
「そうだよ。さっき約束したんだ。だから華ちゃんの嫌がることしないでよ!」
お母さんたちが駿矢に気を取られてる隙に、華にこっそり聞いてみると……
「うん。約束したよ。だって、パパに似てイケメンだし、結婚してくれたら贅沢させてくれるって言うからさ~それに、この家も華にくれるって」
「あっそう……」
せっかく同年代の彼が出来たけど、駿矢は華の叔父で、駿矢から見れば華は姪っ子。残念ながら結婚は出来ない。
父親に続き、また禁断の恋に堕ちてしまった華が不憫でならない。可哀想な華……