この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
複雑な思いで華と駿矢を見つめていると、今まで華と感動的な対面に涙を流していたお母さんが、何かを決意した様にスクッと立ち上がった。
「これは、由々しき問題よ」
「へっ?」
「鳳来物産の社長の息子が子供まで居るのに、籍を入れただけで式を挙げないなんて、傘下の会社が変な勘ぐりを入れてきたらどうするの? 鳳来家の団結が疑われるわ。
ちゃんと世間様にふたりをお披露目しないと……なるべく早く、そして、ハンパ無く盛大にね」
「はあ……」
「とにかく急いで式を挙げなくちゃ……」
考え込んでいたお母さんが、急に悪魔みたいなヤバい顔でほくそ笑む。で、その視線の先に居たのは、玲香さん。
「玲香さん? あなたの結婚式って、1月8日だったわよね?」
「え、えぇ、私の誕生日だから、彼がその日にしようって……」
「悪いけど、その日の結婚式は銀之丞さんとミーメちゃんの結婚式に変えてもらうわ」
「な、何言ってんの? お母さん!」
余りにも大胆な提案に全員が愕然とする。
「でも、彼が……」
シドロモドロの玲香さんは、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「吸収合併する会社の息子との結婚より、こっちの方が大事よ! 銀之丞さんは、鳳来物産の次期社長になるかもしれないのよ。何を措いても優先されるべきよ」
それを聞いた副社長さんの顔色が変わる。
「あの、お義母さん……次期社長は、長男の僕じゃあ……」
「あら? そんなの誰が決めたの? ねぇ、あなた?」
お母さんに睨まれ、社長さんが脅えながら「そ、そうだね、決まって……ないかな?」なんて中途半端な返事をするものだから、副社長さんは完全にスネてしまった。
「もう! お母さん、いい加減にしてよ! そんなことまでして結婚式なんてしたくない!」
「……いいの」
「えっ?」
「神埼さん、いいのよ。私の結婚式は日を改めるわ」
「玲香さん……」
なんだか玲香さん可哀想。
「そうと決まれば、クリスマスパーティーなんてしてる場合じゃないわ。ミーメちゃん、ホテルに衣装合わせしに行くわよ」
「えっ、ちょっ、今行くの?」
「当然でしょ? もう2週間しかないんだから」
お母さん、強引過ぎだよ……