この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
結婚式を1週間後に控え、明日はお休みなので、式の打ち合わせを兼ねて華を連れ、銀の家に泊まりに来た。
当初、戸惑っていた華もすっかり慣れた様で、お母さんと社長さんに甘えてる。なんといっても、ふたりとって華は初孫。可愛くて仕方ないみたいだ。
駿矢ともラブラブで"禁断の恋"だということは、まだ暫く黙っておこう。
「ねぇ、副社長さんとこは子供居ないの?」
「えぇ、どうも夫婦仲が良くないみたいでね。ミーメちゃん達の結婚式に嫁が来るかも分からない状態なのよ」
「そうなんだ……」
家族全員で夕食を食べた後、私とお母さんは別室で結婚式の打ち合わせ中。
「あのぉ~お母さんにお願いがあるんだけど……」
「んっ? 何?」
私は例の"社内恋愛禁止"の撤回を求める署名をお母さんに見せ、頭を下げる。するとお母さんは、考える間も無く「いいわよ」って、アッサリ承諾。
「以前、社内恋愛がこじれて問題が起こったことがあったから、禁止にしたんだけど、ミーメちゃんたちも社内恋愛ってことになるしね。この際、撤回しましょう」
「ありがとー!」
これで田村さんたちにいい報告が出来る。
「それと、もう一つ。お母さんに聞きたいことあるんだよね~」
ずっと不思議に思ってたこと。副社長さんと怜香さんが、どうしてお母さんの言い成りになるのか? 普通、後妻さんって嫌われるものなんじゃないの?
それを訊ねるとお母さんは、不気味な笑みを浮かべ「仕方ないわね、ミーメちゃんにだけ教えてあげる」とあのふたりにまつわる話しを始めたんだ。
まず怜香さん……お母さんがこの家に来た頃、既にふたり共この家を出て独立してたんだけど、時々は帰って来て、泊まっていたそうだ。
怜香さんが泊まった次の日の朝、寝室を出て廊下を歩いていると突然、怜香さんが部屋から飛び出して来てお母さんとぶつかった。
その拍子に、彼女が抱えていたモノが床に落ち、怜香さんは慌ててソレを背後に隠した。
けれど、お母さんは見てしまったんだ。怜香さんが抱えていたのは、敷パットとシーツ。
「怜香さんね、オネショしてたのよ」
「オネショ?」
「二十歳を過ぎた娘が、オネショなんて……私も自分の眼を疑ったわ。でも、間違いなかった。
家の者が起きる前にコインランドリーで乾かすつもりだったらしいの。怜香さんたら、泣いてお願いしてきたわ。このことは誰にも言わないでって」
「それで怜香さんは、お母さんに逆らえなくなったってことなの?」
「まあね~」
あの完璧な、女性の代表みたいな怜香さんが……オネショ? そりゃ~知られたくないよね。
激しく納得してると今度は副社長さんのことを話し出す。
「彼はね、マニアなのよ」
「はぁ? マニア?」