この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
「この家にはね、開かずの部屋があるの。それは、金乃丞さんがここに住んでた時に使ってた部屋。いつも鍵が掛ってて中に入ったことなかったのよ。
でも彼ったら、結婚してるのに週に一度は帰って来て、その部屋でなんかゴソゴソやってるのよね~もう私、気になっちゃって、彼が帰って来た時、お茶を持ってくフリして中を覗いてやろうと思ったのよ」
「で、中を見たの?」
その興味をそそるお母さんの話しに、私は身を乗り出す。
「それがね、金乃丞さんのガードが堅くて、なかなか覗けなかったんだけど、13回目の挑戦で、やっと成功したのよ。ワザと紅茶を床にブチまけてやって、その隙に覗いてやった」
「お母さんも、やるわね」
「そりゃそーよ! 知りたいじゃない」
「で、覗いたらどうだったの?」
ゴクリと生唾を飲む。
「ウサギが……」
「ウサギ?」
「そう、大小様々なウサギのぬいぐるみが所狭しと置いてあったのよ。部屋中ウサギだらけ! 彼、そのウサギだらけの部屋で……ププッ……
ここからは、いくらなんでも私の口からは言えないわ。想像しなさい」
「えぇー! ここまで話してお預けって、ヤダ~」
「お願い。もう無理! 思い出しただけで笑い死にしそうよ~」
お母さんは涙を流しながらゲラゲラ笑い出し、結婚式の打ち合わせどころじゃなくなってしまった。
「もう、ダメ~打ち合わせは明日にしましょう……ヒィーヒヒヒ……」
「えぇーっ」
ソファーの上で転げ回って笑ってるお母さんを横目に、私は部屋を出た。
いったい副社長さんは何をしてたんだろう? ううぅ~気になる。知りたい。しかし、あのニヒルな副社長さんが、まさかウサギマニアだったとは……
ウサギのぬいぐるみに囲まれて喜んでる副社長さんなんて、イメージだだ崩れでドン引きだ。けど、1回くらいは見てみたい……
でも、これで謎が解けた。あのふたりは、とんでもない秘部をお母さんに見られてしまったんだ。逆らえないのも当然だよね。
大きく頷きながら銀の部屋に入ると銀と華がベットで気持ち良さげに眠ってる。華を寝かしつけてて銀も寝ちゃったんだ。
その無防備なふたりの寝顔が堪らなく愛おしい。私の大切な家族だ。
代わる代わる2人の頭を撫でると自然に笑みが零れる。
これから3人、ずっと一緒だからね。
きっと、これが幸せってやつなんだ。なんだか嬉しくて泣けてきちゃったよ。
寝息をたててる銀の唇にそっと触れ、小声で囁く。
「銀のバカ、泣かせないでよね……」