この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
○とんでもウエディング
――1月8日大安 結婚式当日
乾いた空気が漂う冬の空は晴れ渡り、絶好の結婚式日和だ。
式は午後4時からだけど、花嫁は色々用意があるからと1時過ぎにはホテルに入る。
本当はチャペルで式を挙げたかったんだけど、怜香さんが予約してたのが神前結婚式。チャペルは他のカップルの予約が入っていて変更が出来なかった。
だから衣装も白無垢のお着物だ。思いっきり白塗りにされ、幽霊みたいな自分にギョッとしてるといきなりノックも無しにドアが開く。
「ミーメちゃん! おめでとう!」
「よ、横田さん……橋倉さんも……」
係りの人が着替え中だからと止めるのも聞かず、ウルウルしながら抱きついてきた。
「綺麗だよ~うぅっ……沢村に渡したくないよ」
この顔のどこが綺麗なの?
「今日は、ミーメちゃんにお願いがあって……」
「な、何?」
「頼む! 僕のことを"お父さん"と呼んでくれないか?」
このクソ忙しい時に、なんで今なの?
でも、無碍に断ることも出来ず「お……お父さん」と遠慮気味に呼ぶと横田さんは絶叫しながら大号泣。メイクさんが顔を引きつらせ、少しずつ私たちから離れて行く。
泣き喚く横田さんとは対照的に、橋倉さんはなんだか元気がない。
「橋倉さん?」
「神埼……さん、ウップ、今日は、おめでとう。ウエッ……」
顔を見れば、まるで3日くらい寝てないみたいなゲッソリとした表情。そんな橋倉さんの肩を抱き、横田さんがモジモジしながら赤い顔して言う。
「あ、あのね、ミーメちゃん。実は、その……彼女、妊娠したんだ」
これをショックと言わず、何をショックと言うのか……恐れていたことが現実となって私を襲う。それも、一生に一度の晴れ舞台。結婚式の日に……
「そう言うワケだから、また後でね」
私に衝撃だけを与え、そそくさと部屋を出て行くふたり。せめて、式が終わるまで黙っていて欲しかった。
「あの、もう少し普通の顔してもらえますか? お化粧が出来ない……」
あんな話しを聞かされた後で、普通の顔しろって言うのが無理な話しだ。プロのメイクさんなら、このどんより顔をなんとかしてくれ!
そう叫びそうになった時、またドアが開く。
「ミーメ、久しぶり~」