この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止


「亜希菜ぁ~!」


高校時代の同級生。唯一の親友、亜希菜だった。


「ミーメ、なんなのよ~突然、結婚なんて」

「ごめんね。急に決まったから……」

「いいのよ。おめでたいことだし、何より、ミーメが貧乏じゃなくなるのが嬉しいよ!」


ご無沙汰してた亜希菜と昔話しで盛り上がっていると急に暗い顔した亜希菜が声のトーンを下げる。


「でも、ちょっと気になってることがあるんだけど……」

「何?」

「今さっき、この部屋へ入ろうとした時、男性とすれ違ったんだけど、それがほら、昔ミーメとタクシーで下着泥棒追いかけたことあったじゃない? あの時の下着泥棒にクリソツだったのよ。もう~ビックリしちゃったわ」


ゲッ! 銀のことだ。


「あ、そう? でも、何年も前のことだし、亜希菜の勘違いじゃないの?」

「いーや! 私、イケメンは一度見たら忘れないって特技があるの。あの男は間違いなく、あの時の下着泥棒よ」

「いや~違うと思うよ」


別に亜希菜に隠すことじゃなかったんだけど、あれが銀だと言えば、ことの成り行きを初めっから説明しなきゃいけなくなる。それって、超めんどくさい。また日を改めて説明しよう。


亜希菜が勘違いしたまま部屋を出て行き、入れ替わりに入って来たのは、お母さんと華。


お母さんは散々メイクに注文をつけ、華はピンクのヒラヒラドレスが気に入ったみたいで、クルクル回りながら、私に「見て、見て」とうるさい。


「あれ? 華、そのぬいぐるみどうしたの?」

「あ、これはね、このホテルの横にあったゲーセンのUFOキャッチャーで、パパが取ってくれたんだよ。この子"ピョンコリーナ"って言ってね、凄いブレークしてるんだ~

それに、このゴールドのは超レアなんだよ。保育園で自慢しなくちゃ~」

「ふーん」


ふたりは言いたいこと言って、高笑いしながら行ってしまった。


メークさんが疲れた顔して仕上げの紅を差すと、なんだか花嫁さんらしくなってきた。カツラを付け、白無垢を羽織り背筋を伸ばすと気持ちが引き締まってちょっぴり緊張。


いよいよだ……


ゆっくり歩きながら、式場へと向かう。


着物って、なんだか不思議だ。着るだけで大和撫子になった気分になる。銀ってば、私の着物姿を見てどんな顔するだろう? 綺麗だって言ってくれるかな?


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