この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
「週刊誌じゃん?」
その週刊誌は、俗に言うゴシップ雑誌。芸能人の色恋沙汰から、政界のスキャンダルまで幅広く扱うことで有名な週刊誌だ。
「なんで、こんなのが入ってんの?」
ページをペラペラ捲ってると、フセンが貼られていたページで手が止まった。
「はぁ?」
そのページの見出しを見て、言葉を失う。そんな私を不思議そうに首を傾げ見つめる銀。
「どうした?」
「銀、これ……」
「んっ? ……な、なんだ……これは?」
見開きのページにデカデカと書かれた見出しは……
『大企業特集。第一弾! 鳳来物産の闇を斬る!! 華麗なる鳳来一族の御曹司に何が?』
「これって、私たちの結婚式の時の写真だよね? マスコミは全てシャットアウトするって言ってなかった?」
「確かに、親父はそう言ってたが……」
私たちは貪る様に記事を一気読みする。
『先日、行われた鳳来物産、社長の次男の結婚式で、次期社長と噂されている長男(現在、副社長)の奇行が問題になっている。
披露宴のキャンドルサービス時に、フラフラと席を立つと、少女からぬいぐるみを取り上げようとしたり、弟である次男に抱きつき、"UFO"と連呼するなど、意味不明な言動が見られ、会社関係者からは、長男の社長就任を懸念する声が聞こえてきている。
その後、ボヤを起こす騒ぎに発展。ホテル側のコメントでは、前代未聞の出来事だと驚きを隠せない様子だった。
この一連の事件により、次期社長は、次男である沢村銀之丞氏が適任ではないかという意見も多く聞かれた……』
何気に、その通りだ……
「でも、誰がこんな情報漏らしたの?」
私の疑問に、銀は週刊誌の写真を指差し言った。
「これを見ろ。兄貴のすぐ横で撮られた写真だ。俺たちもチラッと写ってる。あの時、マスコミや記者なんて居なかった。
こんな近くで撮影出来るのは、兄貴の近くに座っていたヤツの仕業……そうなると、ひとりしか居ないだろ?」
「それって、まさか……お母さん?」
「義母以外に、こんなことする人間は居ないだろ?」
「……確かに。でも、どうして身内を売る様な事を?」
「ミーメの為……娘の旦那を鳳来物産の社長にしたいと思ってんじゃねぇか? だから、邪魔な兄貴を陥れる様なマネしたのかもな」
「ひぇ~…」
我が母ながら、恐ろしい……でも銀が社長とは、少々、魅力的。そうなれば、私は社長夫人じゃん! 超セレブだよ~悪くない。
「ミーメ、お前、良からぬこと考えてねぇか?」
「めめめ、滅相も無い!」