この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

結局、名前を呼ばれたのは私が一番最後。


「神埼さん、中へお入り下さい」

「は、はい!」


ヤバッ、緊張マックス! でも、ここまで来たんだ。やるだけやって、綺麗に散るか。


「失礼します」


面接室に入ると背筋をピンと伸ばし、頭を下げる。


ゲッ! 何? この無駄にだだっ広ろい部屋は……面接官が遥か彼方に霞んで見える。


なんで面接ごときに、こんなデカい部屋をチョイスする? エリートの考えることはサッパリ分かんないよ。


少し視線を下げ歩くこと数十秒、椅子の横でもう一度一礼し「座って下さい」の言葉で腰をおろす。


ここまでは、完璧!


面接官は男性2人。そっと視線を上げ最高の笑顔を作った。


でも、右側の面接官を見た瞬間、その笑顔は木端微塵に崩れ去る。



か弱い私の心臓は一瞬だったけど、確かに止まった……ような気がした。


うそでしょ?まさか……


柔らかそうな艶のある栗色の髪。鼻筋の通った端正な顔立ち、そして私を見つめる鋭い瞳。


間違いない。彼は、私がこの世で一番会いたくなかった男……


沢村 銀之丞 (さわむら ぎんのじょう)


「ぎ……ん」

「勝手に喋るな!」

「ググッ……」



どうしてコイツがここに居る?



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