この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
「なんだ……コレは?」
「んっ? 朝ご飯だけど」
「これが? 朝メシ? 冗談なら笑って許してやるから遠慮なくそう言え! 今なら、まだ間に合う」
「何言ってんの? バッカじゃない?」
私の言葉に青ざめる銀之丞。なぜ?
「おかずが味付け海苔だけ? 卵焼きは? シャケの塩焼きは? 味噌汁は? 茶碗蒸しは? 煮物は? 漬物は? フルーツサラダは?」
「ないよ」
銀之丞がキッチンのテーブルで、白目をむいて項垂れる。
「いい? アンタの家みたいにウチはお金持ちじゃないの! 米だって残り少ないし贅沢言ってんじゃないの。嫌なら家に帰ればいいじゃない」
一瞬、銀之丞の顔色が変わった。
「分かったよ……食うよ」
素直に味付け海苔に醤油をたっぷり付けてご飯を食べ始めた。
よっぽど家に帰りたくないんだ。そんな気がした。
朝食を済ませると慌てて制服に着替え、銀之丞と部屋を出る。勢いよく階段を駆け降りたとこで、彼が心配そうに呟いた。
「お前、大丈夫か?」
「何が?」
「ひとりで……」
そうだ。すっかり忘れてた。私、今日からひとりなんだ……銀之丞が居たせいで、落ち込む暇もなかった。
「平気だよ。それより、アンタは大丈夫なの?」
「………」
「銀之丞……さん?」
すると彼は「あぁ、じゃあな」とニッコリ微笑んで私とは反対の方向に歩きだす。
あ……