この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
そんなこと思ってるなんて彼に知られるのがシャクで、平静を装いワザと冷たくつれない話し方をしてしまう。
「私、今からバイトだから」
「ほ~ぅ、どんなバイトしてんだ?」
「スーパーの総菜部」
そう言って歩き出した私の後を犬っころみたいに着いてくる銀之丞。
スーパーに到着し、バイトが終わるのは9時だと伝え、それまでどっかで時間を潰していてと言い聞かせる。
不服そうに眉を寄せる銀之丞を残して私は裏のバックヤードから店内に入り、白衣を着ると総菜部へと急いだ。
そろそろ夕方の忙しくなる時間帯だ。
パックされた商品を綺麗に並べていると、どこからともなく聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「美味いな、このウインナー」
「お兄さん、良かったらもう一つどーぞ!」
まさか……
振り返ると、試食販売のウインナーをガッついている男の姿が眼に飛び込んできた。
何やってんだ……銀之丞。
販売員のおばちゃんは嬉しそうに、次から次へと爪楊枝に刺したウインナーを銀之丞に渡してる。
男前は得だな~
妙に感心してると総菜部のパートさんで、影の主任と呼ばれてる古株の桃ちゃんが血相を変えてすっ飛んで来た。
「ミーメちゃん、大変だよ! 夜間の担当だった北村さんが辞めちゃったの」
「えぇー! マジっすか? じゃあ、夜は私ひとり? ヤダァ~」
「可哀想だけど、そうなるね~」
そんなぁ~責任重大じゃない。
仕事も忘れてギャンギャン喚いていたら、ヒョコリ現れた銀之丞。
「どうした? 事件か?」
「大事件だよ!!」