この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

「どうして?」


問い詰める私に、銀は多くを語らなかった。


ただ……「俺も、もうすぐ卒業だ。いつまでもこんな生活してられねぇしな。ミーメにも楽させてやりたいし……」そう言って笑った。


銀の本心が分からない。


その日の夜、銀はいつも以上に私の体を何度も求めてきた。


「ぎぃ……ん……っ」


私の髪を撫でる手は、とても優しくて、首筋に触れる唇は、ほんのり温かい。頭の上で重なり合った手は、お互いの愛を確認するみたいに強く握られる。


「ここに居て……銀。どこにも行かないで?」


揺れる銀の体を抱きしめた私の頬を涙が伝う。


「住む場所が決まったら迎えに来る。それまで我慢しろ」


そう言うと銀の動きは一段と激しくなり、深く突き上げられ私の思考回路は麻痺していく……


「俺を信じてればいいんだよ」

「う……ん」


信じたいよ。銀のこと信じたい。だって、銀が居なくなったら、私、また独りぼっちだもん。もう、大切な人を失うのは嫌だ……


何度も果てた体は疲れきり、知らぬ間に私は眠りに堕ちていた。




――カーテンの隙間から眩しい朝日が降り注ぎ、いつもと変わらぬ朝を迎える。


でも、私の隣りに銀の姿は無い。


そして、銀は二度とこのアパートに帰ることは無かった。


< 49 / 278 >

この作品をシェア

pagetop