この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
すっかり生気を失ってしまった私。
亜紀菜が心配して色々気遣ってくれたけど、私の心は沈んだまま。銀が居なくなったショックから立ち直れないでいた。
銀からはなんの連絡も無く、ひとりで食べる夕飯のお弁当はちっとも美味しくなかった。
――そして月日は流れ、私は高校2年に進学し、クラスの親睦会で訪れたカラオケ店で友達の歌う"別れの歌"に号泣。
「ミーメ、泣きすぎだよ……」
亜紀菜が呆れ顔で涙を拭ってくれる。
「だって~今の私の心情にピッタリなんだもん。去ってしまった恋人を想いながら着てはもらえぬセーター編むなんて……悲しすぎるぅ~」
「はぁ~…都はるみの歌で泣く人、初めて見たよ」
ドン引きのクラスメート達の冷めた視線に気付いた亜紀菜が、私をカラオケから連れ出す。
「送ってくよ。もう帰ろ」
「うん……ごめん」
繁華街を抜け、駅へと歩き出した時だった。
あれは……
一軒のしゃれたレストランから出て来た男性。それは、間違いなく銀だった。
一緒に居る背の高い男性に促され横着けされた黒塗りの車に乗り込む銀。
「行っちゃう……」
「えっ? どこ行くの?」
不思議がる亜紀菜の腕を掴み、もう片方の手を上げタクシーを止めた。
「ちょっと、ミーメ……どうしたの?」
「いいから、乗って!」
亜紀菜をタクシーに押し込み「あの車を追って下さい!」運転手にそう告げると運転手のおっちゃんが振り返り「お嬢ちゃん、ワケありかい?」とニヤリと笑う。
その笑顔を見て、私は瞬時に悪知恵を働かせた。
「私のパンツ盗んだパンドロ見つけたの! 絶対、逃がさないでよ!」
この運ちゃん、こう言った方が絶対燃えるタイプだ。