この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
クーラーはついてたけど、火照った体は汗に濡れ、重なり合った肌は燃えるように熱い。
すると、今まで一言も喋らなかった銀がポツリと呟く。
「早かったな……」
「えっ?」
聞き返した時には既に寝息をたてていた銀。
いったい何が早かったんだろう?
結局、その言葉の意味を聞けないまま何時しか私も睡魔に襲われ愛しい銀の腕の中で眠りについた。
――目覚めたのは、白々と夜が明け始めた頃だった。
まだ熟睡状態の銀。少し短くなった栗色の髪を撫でながら昨夜のことを思い出し、ひとりニヤけている私。自分でも気味悪い。
幸せに浸りながら明るくなった部屋をグルリと見渡してみる。
すると、なんか……変。この違和感は、なんなんだろう?
それは、私にも具わってた"女の勘"ってヤツだった。
昨夜は暗くて分からなかったけど、ダイニングテーブルの上の綺麗な花。サーモンピンクのランチョンマットの横には色違いのマグカップが2つ。
そして、キッチンのカウンターに無造作に置かれた花柄のフリフリエプロン。
家具も白で統一され、とても銀の趣味とは思えない。
これって、"女の勘"が無くても分かるよね……銀には、彼女が居る。酔っ払ってた銀は、私をその彼女と間違えて抱いたんだ。
それだけでもショックだったのに、気持ちよく眠ってる銀の寝言が
更に私を絶望のどん底へと突き落とす。
「――れいか……腹減った。メシ……」
「れいか?」
全てを理解した私の心はこれ以上ないってくらいキリキリと痛み、途方も無い虚しさが押し寄せてくる。
最悪だ。人違いで抱かれてたのに、まだ愛されてると勘違いしてた……私ってホント、バカだよね。
悔しくて、情けなくて、脱ぎ捨てられてた服を必死で拾い集め部屋を飛び出したんだ。