この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

行くあてなどなかった。猛暑の中、古くてデカいキャリーバックを引っ張り汗だくになりながら、ふと気づいたこと。


――私、昨日のお昼から何も食べてない。


そう思ったとたん、猛烈にお腹がすいてきた。


うぅぅ、餓死しそう。それに、暑い……


ガッツリ食べれて長い時間涼めるとこはと考えてみた結果、ファミレスしか思いつかなかった。


所持金も残り少ない。お値打ちなランチを頼み、チビチビと時間をかけて完食。


取り合えず、亜紀菜を頼るか……そう思った時、隣のテーブルの会話が耳に飛び込んできた。


「ねぇ、お願い! ウチの店に来てくれない? 急に2人も辞めちゃって困ってるのよ」


そう言って顔の前で手を合わせてる女性は、ぶったまげるほどの美人さんだった。


「うーん……そんなこと言われても今のお店、給料いいし……ママにも良くしてもらってるから辞められないわ」


美人さんの頼みをやんわり断ってるのは、これまたビックリするほどのどブス!


ブスとゆーより……コイツ、絶対女じゃない。どこから見ても女装した男だ。


エラいもんを見てしまった。ご飯食べた後でホント、良かった。


そんなことを思っていると美人さんが「今、いくら貰ってるの?」って食い下がる。


「言っちゃっていいのかなぁ~時給3000円よ」


はぁ? 嘘でしょ? こんなエグいヤツが時給3000円? 私なんて、スーパーのバイトの時給750円なのに……納得いかねぇ~


「じゃあ、ウチは3050円出す!」


ゲッ! そこまでして欲しい人材なの? それに、50円アップって……微妙だ。



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