この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
半泣き状態の私にママは優しく微笑んだ。
「こんな仕事したいって言うくらいだもの。よっぽとの事情があるんでしょ? 大丈夫、クビになんかしないよ。でも、お店には出せないから裏で雑用でもしてもらうわ」
「あぁ……ママ」
世の中には、こんなに優しい人が居るんだ。ママが太り過ぎの観音様に見えてきたよ。
「ママ、後光が射してる」
「アホ!」
そして私は、このオカマバー『エデンの園』で働き出したんだ。
ママの好意で高校にも通わせてもらって、それなりに人生をエンジョイしていた。
でも……10月になったばかりの夜、いつも通りお店のキッチンでお皿を洗っているとやけに体が重たくてダルい感じがする。
そう思っていたら胸がムカムカしだして立っていられなくなった。
「うっ……気持ち悪い」
その場にうずくまっているとミミさんが氷を取りにやって来た。
「ミーメちゃん? どうした?」
「ミミ……さん」
「ちょっと、真っ青な顔してるじゃない。ここはいいから、もう休みなさい」
ママの許しを得てその日は大人しく寝ることにした。でも、体調は悪くなるばかり。一向に治る気配はなかった。
そんなある日、学校にも行けず寝てる私の所に来たママが思いもよらぬことを言ったんだ。
「ねぇ、もしかして、妊娠してるんじゃない?」
「えっ……」
「思い当たること、ないの?」
あ……
「あるんだね?」
押し黙るママを見つめ何も言えなかった。
そんな……そんなことって……そういえば、生理が遅れてる。
私、銀の子供を妊娠しちゃったの? 別れた人の子供を……
ショックだった。やっと、銀のこと忘れかけてたのに……
頭が真っ白になり放心状態。
次の日、ミミさんに付き添ってもらい産婦人科へ。さすがにママには頼めなかった。あの風貌で産婦人科はキツい。
結果は、妊娠3ヶ月。覚悟はしてたけど、その事実を知らされた時は全身が震え涙が止まらなかった。