この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
「それ、どーゆー意味ですか?」
私が低い声で訊ねると色気ムンムンの彼女は片方の口角を上げニヤリと笑う。
「そのまんまの意味よ。大体、そんな安っぽいスーツ着て、お粗末なメークしてる人が部長の補佐だなんて納得いかないもの。
あなたが私より優れてるとか思わないでよね。部長があなたを補佐にしたのは、ただ単に珍しい存在だったから。この会社には、あなたみたいなタイプの人居ないものね」
「???」
この人、何言ってんだろ?
私がキョトンとしてると、ひとり黙々とランチを食べていた橋倉さんが突然怒鳴りだした。
「田村さん、いい加減にしなさい! あなたが部長の補佐を外されたからって神埼さんに当たるのは筋違いでしょ」
なるほど、そういうことか。この田村さんって人、銀の補佐してたんだ。私に補佐の座を奪われたから怒ってんだな。
でも橋倉さん、どケバい化粧して不気味な人だと思ってたけど、なんの、なんの。カッコいいこと言ってくれるじゃん。
橋倉さんに怒鳴られた田村さんは私を睨みつけながら別の席に移って行った。
「橋倉さん、凄いですね~ビックリしちゃいましたよ」
「あらそう? それほどでもないわよ」
そう言いながらも、得意げに鼻を鳴らす橋倉さん。
「あぁ! もしかして、橋倉さんって、お局様ってヤツですか?」
私の一言で急に辺りが静まり返る。そして、周りに座ってた女子社員たちが一斉にクモの子を散らす様に居なくなた。
「あれ? あれれ?」
「……神埼さん」
「はい?」
「あなた……人を不機嫌にさせる天才ね」
「へっ?」
そして、目が据わった橋倉さんが無言でフォークを振り上げるとそれが鈍い音をたてテーブルに突き刺さった。
間一髪! 危うく左手を刺されるところだった……