この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

ーーそんなこんなで、やっと初日の仕事が終わった。色んなことがあって、長い一日だったな……


娘の華が美味しそうに、タッパのおかずを食べてるのを見ながら私は『エデンの園』からクスねてきたビールを飲み干す。


「ミーメさんは食べないの?」

「じゃあ、ちょっと貰おうかな……」


残ってた唐揚げを食べようとした時、華が大声を上げる。


「ミーメさん、ダメじゃない! 箸の持ち方違うよ!」

「あぁ?」

「もぅ~何回言っても直さないんだから……」

「……すみません」


しっかり者の華。これじゃあ、どっちが親か分かんないよね。やっぱり、どっか銀に似てる。まるで銀と居るみたい。


そして、どうやら脳みその方も銀のDNAを受け継いだらしく、5歳にして既に簡単な漢字の読み書きが出来るし、買い物の時の支払いの計算も私よりはるかに早い。


保育園の先生からは"私立の小学校に入れたら?"なんて言われてる。


お金さえあればね……とにかく華の将来の為にも私が頑張らないと……


華を寝かしつけ、下のお店に下りていくと珍しくお客さんが誰も居ない。


「暇そうだね。ミミさん、ちょっといいかな?」


実は今日、社員食堂で田村さんに言われた言葉がずっと、気になってたんだ。


"安っぽいスーツ着て、お粗末なメーク"か……


一応、私も女だもん。あんなこと言われたら悔しいよ。


「あのね、ミミさんのスーツ貸してもらえないかな?
それと、メークの仕方も教えて欲しいの」


キャサリンママが"なんで私に言わないの?"って顔してこっちを見てる。悪いけど、ママには教わりたくない。察してちょうだい。




ーーそして、次の日
ミミさんに借りたちょっとハデめなスーツに身を包み徹夜でマスターしたメークを施すと意気揚々と会社に向かった。


すると、営業部のドアの前で偶然銀と鉢合わせしてしまった。


「……お前」

「んっ?」

「ちよっと来い!」

「あれぇ~」


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