この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
銀に腕を引っ張られ廊下の角を曲がると『資料室』と書かれたドア現れ、そこに押し込められた。
「なんだ? その格好は?」
「あ、これ? 可愛いでしょ?」
私は得意げにクルクル回ってポーズをとってみる。
「……脱げ」
「はぁ?」
「いいから、そのスーツ脱げ」
まさか銀ったら、可愛い私を見て発情した?
「そんな……朝っぱらから……ダメだよ」
銀の腕を振りほどき、少し距離を取る。
「アホ! そんな場違いなスーツでオフィスに入るな! ショッキングピンクのラメって、なんちゅー趣味してんだよ! それに、そのバケモノメークもなんとかしろ!」
「へっ?」
もしかして……全否定?
「橋倉君も酷いが、お前のは犯罪だ! 許せる範囲を遥かに超えてる」
ガーン……
そんなぁ……可愛いと思ったのに……てか、橋倉さんより酷いだなんて立ち直れない。
放心状態の私に銀は「スーツを買ってきてやるから、ここで待ってろ」と言い残すと資料室を出て行った。
ひとりになると虚しさが胸を締め付ける。
頑張ったのに……田村さんを見返してやりたいって思ったのもあったけど、ホントは銀の補佐として認められたい。その一身だった。
私、バカみたい……
その場に座り込み資料の詰まった棚にもたれ掛かると涙がショッキングピンクのスーツを濡らす。
暫くすると銀が息を切らし、ショップの大きな紙袋を下げて戻って来た。
「なんで泣いてる?」
「暇だったから泣いてたんだよ!」
「そうか」
そうかって、それだけ? 相変わらずだな…銀。
呆れて泣き笑いをしていたら……
「ほら、もう泣くな。メークが崩れてキョンシーになってんぞ」
「キョンシーって、何?」
「ゾンビだ」