この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

「ゾンビって、何それ?」


怒り爆発! 銀に殴りかかる。


でも、私の攻撃は難なくかわされ、そのまま床に倒されてガッチリ押さえ込まれた。


うっ、銀の顔……近い。


「すぐムキになるとこは変わんねぇな。早く着替えろ」


銀の大きな手のひらが私の髪を撫でると彼の吐息で私の前髪が微かに揺れた。


あ……


懐かしい銀の温もりーー思わず胸がキュンとなる。


ダメダメ! 私ったら、なに意識してんだ。


「わ、分かったわよ! 着替えればいいんでしょ?」


銀の体を押し退け、彼の手から紙袋を奪い取ると棚で仕切られた部屋の隅に走り出す。


銀の選んでくれたのは、シックなブラックスーツ。少し短めのタイトスカートに、2つボタンのタイトな上着。


ありふれたデザインだけど、どこか品のあるスーツだ。


棚の間から少し照れながら出て行くと銀は腕組しながら満足そうに目を細める。


「…これで、いいんでしょ? それと、サイズがピッタリだった。よく分かったね」


すると、目の前に立った銀に突然顎をクイッと持ち上げられた。


「当たり前だ。お前の体は隅から隅まで知ってるからな」

「ぐっ…」


意地悪くニヤリと笑う銀に心拍数と血圧が急上昇! 同時に顔が熱くなり呼吸が乱れる。


「顔洗ってから来いよな、ミーメ……」


再会して、初めて名前で呼ばれた。


そしてそれは、一瞬の出来事だったーー


火照った耳たぶに銀の唇が触れたんだ。


「あっ……」


蘇ってくる過去の情事。打ち消せば打ち消すほど、鮮明に脳裏に浮かんでくる。


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