この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
どこにどんな資料があるのか、まだ把握出来てない私。いちいち橋倉さんに聞きながら用意してたから、すっかり遅くなっちゃった。
痺れを切らした銀が私のデスクまでやって来て、呆れ顔でため息を漏らしてる。
「もういい。時間がないから出るぞ」
「あ、はい」
慌てて資料を抱えた時だった。振り返ろうとした私のスーツの襟を掴む銀。そして、そのまま引きずられていく私……
「あわわわ……」
「トロトロしてんじゃねぇぞ! 遅いことは猫でも出来る」
「ち、ちょっと~私は猫以下ってこと?」
「猫以上だと思ってたのか? 猫に失礼だろ?」
「何それ?」
バカな会話をしてる間も私はズルズル引きずられ、視線の先には、橋倉さんを筆頭に、唖然とした社員たちの間の抜けた顔が並んでいた。
一応、手を振ってみた。でも、誰一人として振り返してくれる人はい。
私、完全に浮いている。銀、お願いだから、あんまり馴れ馴れしくしないでよ~。私、ここに居られなくなるよ~
で、引きずられたまま地下駐車場に到着。
「乗れ」
「はいはい」
「返事は一回!」
「はーい」
「伸ばすな!」
まるで華と居るみたいだ。さすが親子だな。
観念して乗り込こんだ車がゆっくり走り出し、地上に出ると一気に日の光が車内に射し込み銀が眩しそうに目を顰めた。
その表情に、またもやキュンとしてしまう。
やっぱり男前だ。