この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
固めのベットに腰を下ろし、瞬きするのも忘れ辺りを見渡す。
初めて来たラブホに興味がない訳じゃない。むしろ、興味津々だ。
皆、こんなとこでシてるんだ。うっ……またイケナイ妄想が……
銀に説教することなどすっかり忘れ、おのぼりさん気分の私。
変態モード突入の私とは対照的に、少し離れたソファーに座った銀は私に背を向け何やらゴソゴソやっている。
まさか……私が居るのに、ひとりで?
完璧に、そっち方面のことしか考えられなくなってた。
「銀……?」
恐る恐る立ち上がり、抜き足差し足で銀の元に歩き出した時、部屋のドアをノックする音がした。
へっ? 誰?
と、突然ドアが勢い良く開き、若い男性が「まいど!」って言いながら入って来た。
ななな、なんだ、コイツ? めっちゃチャラい。
テンパった私は思わず銀の座ってるソファーの背もたれに身を隠す。
「あれぇ~お嬢さん、どうしたの?」
すると銀は、まったく動揺することなく「コイツのことは気にするな。時々、意味不明な行動する変な女だ」とか、言ってる。
「ほーっ、天下の鳳来物産にもそんな子居るんだな?」
「まぁ、おりこうさんばっかじゃ面白くねぇからな」
「確かに!」
何? 人の悪口で盛り上がってる?
「おい、ミーメ、こっち来て座れ。仕事だ」
「……仕事?」
って、ことは、秘密の情事じゃなかったってこと?
ゆっくり背もたれから顔を覗かせると銀が私の用意した資料をガラステーブルに広げてる。
よくよく話しを聞いてみたら――
このチャラ男は銀の大学の同期で、今は父親の後を継ぎ、幾つもラブホを経営してる社長なんだそうだ。そして、ウチの会社のお得意さんみたいで、今日はバリ島のリゾート会員権を彼に売りつけに来たそうだ。