この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

「どうしてもシたくて、他のホテルが満室でも、このホテルでだけはパスだ」


申込書と領収証を確認しながら銀が愛想なく言う。


「ふーん、それは残念だ。じゃあ、金持ってくるから待っててくれ」


ラブホのお兄さんが残念そうな顔して部屋を出て行く。


「ねぇ、銀。どうしてこのホテルはパスなの?」


すると銀は私の顔をマジマジと見つめ「ミーメは、シたかったのか?」って真顔で聞いてくる。


「ち、違うって! なんで嫌なのか知りたかっただけだよ」

「……キスくらいなら、いいぞ」

「だーかーら! そんなんじゃないって!」


全く、この男は何考えてるんだ。


呆れてプィッと横を向くと「誰にも言うなよ」と銀が小声で話し出す。


"誰にも言うなよ"――その、好奇心をかき立てる魔法の様な言葉に
迷い無く大きく頷く私。


「言わない! 死んでも言わない!」

「あのな、このホテルは盗撮してるって噂があるんだ」

「マ、マジ?」

「あぁ、だから俺たちを事務所には入れたくないんだ。盗撮用のモニターが有るんだよ。

まぁ、そんなことより、アイツに俺の最高のテクニックを見せる訳にはいかねぇだろ? 真似されたらムカツクし……」


そっちかよ?


「ミーメもそう思うだろ?」

「し、知らないよ。そんなこと……」

「知らないワケないだろ? あんなに感じてたくせに」


笑いながらそう言った銀に「感じてなんかない!」と怒鳴り、脳天めがけて怒りの鉄拳を振り下ろす。


「痛ってー! 嘘つくな! ヒイヒイ言ってたろ?」

「な、ヒイヒイなんて言ってない!」


で、乱闘騒ぎ――


そして、視線を感じて振り返れば、そこにはニヤけたラブホのお兄さんが立っていた。


「やっぱ、スる?」

「シないって!」


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