この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
――「そんなモン、捨てちまえ!」
会社に戻る車の中で銀が怒鳴る。
「だって~せっかく貰ったんだし……捨てるなんてもったいないよ」
今、私の手には、ラブホのお兄さんに貰ったホテルの割引券が乗っかってる。
根っからの貧乏性の私は、割引券やら引換券という類の物は捨てられない性分なのだ。
「そんなの貰って、使う時あんのかよ?」
「あ……」
確実に無いな。
「男……いるのか?」
「えっ……」
「どうなんだ? ラブホ行く様な男、いるのかよ?」
「それは……」
即答出来ない私に、銀がボソッと呟く様に聞いてくる。
「……あれから、誰かと付き合ったのか?」
「それなりに……」
今の私は、そう答えるのが精一杯だった。
銀だって、私と離れてすぐ彼女つくってたくせに。
お互い何も喋らない居心地の悪い車内。会社に着くとリゾート会員権の契約者とその担当者の名前が書かれた札が掲げられた。
「あ、私の名前だ」
担当の営業マンの名前が私の名前になってる。
すると橋倉さんが擦り寄って来て「部長ったら、あなたの成績にしたのね」って囁く。
「私の成績?」
「やっぱり部長は優しいわね。補佐には成績はつかないのに……神埼さん、部長に感謝しなさいよ。契約上げたら報奨金が出るんだから」
「報奨金?」
「そう、一件、3万」
「さささ…3万?」
なんて太っ腹な会社なんだ。さすが大企業の鳳来物産だ。
あぁぁ……でもこれって、銀のお陰なんだよね。
銀がハイエナになってくれたから、私は3万という大金が貰えるんだ。