この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

○"華"の正体




泣きそうになりながら『エデンの園』のドアを開けるとキャサリンママがトドみたいな雄たけびをあげ号泣していた。


その迫力に圧倒され、私の涙はどこへやら……


「ママ? 華は?」

「あぁ~ミーメちゃん、ごめんねー私が目を離したのが悪かったのよ」


私に抱きつき、尚も泣き続けるママ。


「ぐっ……ママ、苦しい」


店のお客さんはどん引。というより、脅えてる。


見かねたミミさんが人差し指を立て「上、上」っと私に相図してくれた。


華、部屋に居るんだ。


やっとの思いでママの腕から逃れると店の奥にある階段を駆け上がる。


「華ぁーー!!」って……あれ?


血相を変えて部屋に飛び込んだ私の目に映ったのは、楽しそうに笑いながらトランプを並べてる華と見ず知らずの男性。


「誰?」

「あ、こんばんは。お邪魔してますよ」


そんなの見れば分かる。アンタは誰なの?


すると階段を上がって来たミミさんが私の肩をポンと叩き言う。


「ミーメちゃん、この人はね横田さんっていって、お店の常連さんよ。華ちゃんが階段から落ちた時、たまたまお店に来ていて、怪我の具合をみてくれたの」

「お医者さんなの?」

「いや、僕は医者じゃないけど、学生時代に柔道やっててね。一応、整体とか詳しいから……

大丈夫だよ。骨には異常ないし、ただの打ち身だね。湿布しといたから数日で良くなるよ」

「はぁ……」

「横田のおじちゃん。次、早く出して!」


その横田さんという男性は、すっかり華と仲良くなっちゃったみたいで、2人で"オイチョカブ"をやってる。


「はいはい。ほら、これでどうだ!」

「うーん……もういっちょ!」


< 83 / 278 >

この作品をシェア

pagetop