この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止

結局、また遅刻だ。橋倉さんの目が据わってる。マジ、怖い……


「神埼さん、言いたいことは山ほどあるけど、部長が呼んでるから行きなさい」

「は、はい」


逃げる様に席を離れ部長室へ向かう。


――トントン……


「神埼です」

「――入れ」


ドアを開けると銀が凄く怖い顔して私を待ち構えていた。


「説明しろ」

「説明って?」

「昨日のことだ。今朝、橋倉君に聞いたら怪我なんてしてないし、お前の携帯の番号も知らないって言ってたぞ!」


あぁ……そうだった。華のことで一杯一杯で、橋倉さんのことすっかり忘れてた。


「どうなんだ? 答えろ」


万事休す。でも華のことを銀にバラす訳にはいかない。


「ごめんなさい。実は……"はな"っていうのはお母さんのことなの」

「えっ、男と逃げた母親が帰って来たのか?」

「……うん。今、一緒に暮らしてる」

「そうか、帰って来たのか」


銀の表情が緩む。


「良かったな。ミーメ、お前の履歴書に扶養家族アリって書いあったから、もしやって、思ってたんだ。やっぱり母親のことだったんだな?」

「へっ? あ、あぁ……そう。お母さん仕事してないから私の扶養家族になってるんだ~」


思わぬ展開に顔がニヤけそうになる。銀ったら、勝手に勘違いしてくれた。ラッキー!


銀の怒りも収まったし、一石二鳥。これで華のことを知られずに済む。


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