この恋、極秘恋愛につき社内持ち込み禁止
「むす……め?」
銀の顔色が変わった。彼がこんな顔したの初めて見た。
「娘は、幾つだ?」
「……5歳」
キャサリンママもミミさんも他のおかまちゃん達も押し黙り、静まり返った店内。
「父親は?」
「……居ない」
「なんで?」
その時、キャサリンママと目が合った。ママは銀が父親だと気づいてる様で"本当のことを言いなさい"って目で訴えている。
でも、銀と別れてもう6年。今更、あなたの子供だと言って銀が喜ぶとは思えない。それに、迷惑そうな顔されたら華が可哀想。
私が答えられず下を向いた時だった。華が銀のスーツの上着をクイクイ引っ張りながら言ったんだ。
「あのね、華のパパは死んじゃったんだよ」
「死んだ? いつ?」
「華がまだミーメさんのお腹に居た時、事故で死んじゃったんだって。だから、パパは居ないの」
華~ナイスフォローだよ~
常日頃、私が話している"架空の父親"のことを当然の様に語ってる華。
「そうか……」
銀が華の頭を優しく撫でてニッコリ笑う。すると華が、なんだかモジモジしだした。
「華? トイレ?」
そう聞いた私を華が凄い怖い目をして睨んでくる。
「ミーメさん! 銀様の前でそんなお下品なこと言わないでくれる?」
「はぁ?」
銀様って……なんだそれ?
私が呆気にとられてると華が「ねぇ~、ぎ・ん・さ・まっ!」って5歳児とは思えない甘い声で囁き、銀の足に纏わりつく。
「ねぇ、銀様、私の部屋に来ない?」
うそ……誘ってるし……まさか、華、銀に惚れた?